公開にあたって
2025年8月に放送されたNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」のドラマパート(前後編計98分)は、実在した「総力戦研究所」と日米開戦への流れを描いた猪瀬直樹氏のノンフィクション「昭和16年夏の敗戦」を原案として創作されています。
個々人の戦争への恐れや抗いを押し流して開戦へと向かった昭和16年夏の「世の中の空気」を、まさに今の時代に物語として描くことの重要性を感じ、制作いたしました。そして、この作品のテーマをより深くお伝えするべく、約139分の完全版を映画『開戦前夜』として2026年以降に劇場公開予定です。
(本作ドラマへのご指摘について)
本作ドラマの放送に際して、劇中に登場する「板倉大道少将」の描写が実在の人物と異なり、これが歴史の捏造・歪曲にあたると一部からご指摘を頂戴いたしました。
昭和16年夏、総力戦研究所の研究生たちが首相官邸において総理大臣・閣僚・軍人の前で研究報告を行ったという史実があります。当時実在した研究所は、所長が自由闊達な議論を奨励する風通しの良い雰囲気であったと記録されており、研究生たちが日夜アメリカを中心とした諸国との戦争をシミュレーションして導き出した答えは「日本は必ず敗戦する」でした。この結果は報告会で発表されたものの、最後に報告内容と矛盾する所長の講評が行われ、研究生たちを憤慨させたとも記録されています。様々な解釈が可能でもあるこの講評ですが、当初自由闊達な議論を奨励したにもかかわらず、なぜ最後にこのようなことになったのか?私たちはここに着目しました。日米の国力差に大きな開きがあるという事実は当時の軍部でも認識されていましたが、この作品で描きたかったのは、それを誰もが責任を持って公の場で発言できなかった社会の「空気」で、これこそが作品テーマです。
本作は歴史的事実を基にしたフィクションです。
表現にリアリティを持たせるため、総力戦研究所での研究内容や開戦への流れは、複数の専門家による時代考証と数々の取材に基づいて検討を重ね、そこに創作を加えてテーマを伝える物語を紡ぎました。架空の名前の人物に特定のモデルはいません。「板倉大道少将」も実際には存在せず、架空の人物であることを放送時にはテロップ等により明示しました。
また、本作は原案著者・猪瀬直樹氏の承認も得て制作されています。
本作を通じて歴史を歪曲したり、特定の個人の名誉を毀損する意図は一切ございません。
ご指摘の内容については、誤解が生じることのないよう、テロップでの明示を含む複数の対応を検討しております。
引き続き、様々なお考えや見解に真摯に向き合いながら進めて参ります。
映画『開戦前夜』製作委員会